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アトピー性皮膚炎と汗 <その1>皮膚の保湿のための汗がでていない
先週末は、京都で開催された日本皮膚科学会総会に
行ってまいりました。
今回もっとも興味深かったのは
アトピー性皮膚炎と発汗の話題です。
以前よりアトピー性皮膚炎の皮膚では汗をかきにくい、
汗をかくときに異常にかゆみが生じることは
知られていました。
*「発汗障害から考えるアトピー性皮膚炎の病態とその対策」
杏林大学皮膚科学教室 下田由莉江先生
*「保湿剤のこんな使い方しっていますか?」
川崎医科大学付属川崎病院 青山裕美先生
よりお話しを伺いました。
私たちのかく汗には大きくわけて2種類あります。
運動したりしたときにかく汗と
特に何もしていない状態で知らず知らずの間にかいている
汗です。
皮膚の保湿すなわ角質水分量をあげて
うるおいのある肌に保つために必要なのは、この
後者の汗すなわち皮膚からの不感蒸泄の汗です。
アトピー性皮膚炎の方ではこの不感蒸泄の汗が少なく
肌が乾燥し、皮膚炎になりやすいのではないか?いや
そうでもない。と議論がありましたが最近では
やはり発汗低下があるという結論になっています。
手のひらや足の裏の発汗は皮膚のキメ(皮膚紋理)の
皮丘と呼ばれる部分からの発汗です。
それに対して体の大半の汗は
安静時(不感蒸泄)の汗は皮溝からのみで、
この汗が角質水分量に関係し、皮膚を保湿する汗と言われています。
温熱負荷時に体温を下げるために出る汗は、
皮丘と皮溝の両方から出ます。
アトピー性皮膚炎の方の皮膚では、
キメ(皮膚紋理)が乱れ、
この安静時の皮溝からの汗が低下しており、
皮膚が乾燥しやすいです。
また温熱負荷時にも体温を下げるための汗が少ないため
うつ熱しやすい傾向があるようです。
そして膝の裏側や肘の内側のみなど、
患部が限定している初期のアトピー性皮膚炎では、
皮疹のある部位も、無い部位もともに
皮溝からの、角質水分量に関係する汗は減少し、
その代償性と考えられる皮丘からの発汗が増えているそうです。
それに対して、全身に皮疹があるような
進行したしたアトピー性皮膚炎では、
皮溝からの汗の減少はもちろんのこと、
その代償性の皮丘からの発汗もなくなってしまっているそうです。
そのことからどうやら、皮膚症状に先行して
皮膚からの発汗の減少があるということが
分かってきました。
また、アトピー性皮膚炎の方では、汗でかゆくなることは
よくあります。
でも、
実は汗は出ないのに、汗をかきそうになるとかゆい
ということがあるようなのです。
それは汗の腺で作られた汗が、
皮膚表面へ出ずに、真皮で漏れ出ていることがわかりました。
そのため、角質水分量をあげる保湿作用のある皮溝からの
汗は減少し、また真皮層でもれでた汗が刺激になり、
汗はでないのに汗が出そうな時にかゆい!
となるのです。
この皮膚症状に先行する汗とくに皮溝からの汗の減少を
改善できれば皮膚炎を予防できますね。
では、どうしたら潤った皮膚にするために必要な
汗が出るようになるのか
その方法について次回お話しします。
カテゴリー:★ 院長ブログ・医療情報 ★, アトピー性皮膚炎 更新日:2016年6月6日