八丁堀 皮膚科|スキンソリューションクリニック Rotating Header Image

妊娠中の皮膚トラブルは多彩です。妊娠に特異的な発疹や持病の皮膚疾患の悪化など。胎児への影響のないものからあるものまで。

先日、妊娠後期の方で3ヵ月前より発疹がでており
近くの診療所でずっと治療を受けているが
改善しないということで当院を受診されました。

こんな風に、妊娠によって大きくなったお腹周りを中心に赤い斑点が出ています。
湿疹や虫刺されの診断で3ヵ月もの間加療をされていたとのことでしたが
(その先生は皮膚科専門医ではありません)
「pruritic urticarial papules and plaques of pregnancy(PUPPP)」
という妊娠に関係した皮膚疾患がまず疑われました。
この疾患は赤ちゃんへの問題はとんど生じることはありませんが、
他の、胎児へ影響のある疾患との鑑別のための検査の必要性、
そして発疹がかなり拡大した際にはステロイドの全身投与の必要が生じることもあり、即総合病院へ紹介受診していただきました。

妊娠中にはホルモン、免疫機能が大きく変化し、
さまざまな皮膚病変が生じえます。
治療が必要なく治ってしまうものもあれば、
胎児に影響するため即治療が必要で、産婦人科の先生方と
一緒に慎重に経過を診る必要なものまであります。

*6より抜粋

この表を見ていただきますとわかりますように
これらの疾患の「予後」の中には胎児に影響するものがあります。

私たち皮膚科医は、これらを鑑別して診ています。
でも、今回のように、その疾患の治療経験があまりないと
普通の湿疹や蕁麻疹等と見過ごされてしまう可能性があります。
発疹についてきちんとした説明を受けることが
できなかった際には
「日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医」を受診してください。

 

妊娠に伴う皮膚病変には、
1.「病気ではなく妊娠による生理的変化によって生じる現象」
2.「妊娠によって持病が悪化する場合」
3.「妊娠に特異的な疾患」
等に分かれます。

1.は乳輪やワキの下の色が黒くなる、肝斑等の色素沈着の増強。
エストロゲンの高い状態が続くことにより、
手のひらが赤くなったり、
くも状血管腫や唇にできる静脈湖(微小血管の局所的な拡張)ができたり、
痔や静脈瘤の悪化(血行状態の変化に加えて)
など血管拡張病変、
その他ホルモン変化による多毛、逆に脱毛等があります。

2.は膠原病、腫瘍性病変、アトピー性皮膚炎等の悪化です。
アトピー性皮膚炎の悪化は、たびたび遭遇します。
調査の報告の多くは、半数以上の方で妊娠で悪化することが多いようです*1。
悪化の原因としては、免疫状態の変化によるもの*2、
生理前に悪化する人が多いようにホルモン変化による影響、
妊娠中はエクリン汗腺の機能が亢進し、
汗の量が増えるといわれており、汗による悪化*3、
胎児の成長に伴い需要の高まる必要栄養素の不足によるもの、
妊娠によるさまざまなストレス等
さまざまな要因が関与していると考えられています。

そして最近では、もともとアトピー性皮膚炎のある方が
妊娠によって悪化するばかりでなく、
妊娠してはじめてアトピー性皮膚炎のような症状を
発症するケースもあるとされています。

このようにアトピーの既往のある方の悪化、
ない方の発症を含めて妊娠中のアトピー症状を
最近ではAtopic  eruption of pregnancy(AEP)
とまとめて呼んでいます。

 

3.は上記の表の疾患です。

 

このように妊娠中の皮膚トラブルは、さまざまな視点から
診察し診断が必要です。
そして妊娠中であることを考慮した治療
(妊娠中に投与可能な薬剤と量など)が必要です。
日本皮膚科学会皮膚科専門医にご相談ください。

 

*1.Cho S.Kim HJ et al. The influence of pregnancy and
enstruation on the deterioration of atopic dermatitis.
ann Dermatol 2010;22:180-5.
*2.Piccinni MP.T-cell cytokines in pregnancy.Am J Reprod Immunol 2002;47:289-94
*3.Kroumpouzos G et al.Deratoses of pregnancy.
J Acad Dermatol 2001;45:1-19
*4.妊娠に特異的な皮膚疾患.医学のあゆみ,238:801-2,2011.
*5.寺木祐一:妊娠とアトピー性皮膚炎.アレルギー63(2):147-154,2014.
*6.森 志朋ら:pruritic urticarial papules and plaques of pregnancy(PUPPP).周産期医学,41(6):719-723,2011

 

投稿日:2018年7月12日  カテゴリー:★ 院長ブログ・医療情報 ★, 健康情報・アンチエイジング