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AGA治療薬の副作用について ~性機能障害関連~

先日私が行いましたAGA治療のセミナー後、
多くの先生よりAGA治療薬の副作用のことについての
ご質問をいただきました。
特に性機能障害関連についてです。

 

実際にAGA治療薬を処方されている先生方から

「なんとなくそういう副作用があるらしいが
実際はどうなのか実はよく知らない。どうなの?」

「治療開始してそのような訴えがあると
AGA治療薬のせいであると言ってしまっているが
え?違う場合があるの?」
(他の可能性について知りたい)

そのお返事を多くの先生方に
簡単にすることができませんので
このブログを介して解説することにしました!

また現在治療を受けている患者様、
これから治療を検討されている方も、
様々な情報にあふれ、医師からもあまり詳しく説明がないと
ご心配が多いと思いますのでご参考になさってください。

 

2017年7月29日に行われました第35回美容皮膚科学会総会
での河野吉昭先生による「泌尿器科医からみたデュタステリド」
のご講演内容をもとに
私なりにまとめてみました。

 

 

★まず厚生労働省承認薬のAGA治療薬は
どのような薬なのか。

現在承認されている2種類のAGA治療薬
フィナステリド(先発品はプロペシア)と
デュタステリド(ザガーロ)
ともに前立腺肥大症のお薬の一つです。

前立腺肥大症のお薬には数種類あります。
主なものには
「抗アンドロゲン薬」「5α還元酵素阻害薬」
があります。
フィナステリドやデュタステリドは後者の
5α還元酵素阻害薬に当たります。

ともに前立腺肥大やAGAの原因となる
DHTというホルモンを減少させます。

*図は内科医のための前立腺疾患の臨床「2001」P1247より抜粋

この図の中にある
主に「テストステロン」が減少すると性機能低下が生じることがあります。
ただしテストステロンは個人差がありますが
30歳代後半より加齢によって減少します。

図のように、フィナステリドなどの5α還元酵素は
抗アンドロゲン薬のようにテストステロンを下げず
(むしろフィードバック作用で少し上昇)
性機能低下は原則起こしにくいです。

性機能はテストステロンが重要な働きをしています。

 

★AGA治療薬服用にて報告のある性機能障害
主なものは
・リビドー低下(性欲低下)
・ED(勃起障害)
・射精障害
・オルガスムスの減少(性的絶頂の減少)
などです。

 

まずはリビドー低下(性欲低下)について
性欲中枢は脳の視床下部ー扁桃体にあると
いわれています。これはテストステロンにより主に
刺激され、DHTでは刺激されないことがわかっています。
従ってDHTを抑制するAGA治療薬は原則リビドー低下を
生じませんので、もし治療を開始してからそのような症状が
感じられた場合には、何らかのほかの要因でテストステロンが
低下している可能性があります。
テストステロンは血液検査や唾液検査で測定することができます。
また海外の報告では、治療開始初期にリビドー低下の症状が
あっても、その後治療を継続し6ヶ月経過すると全例が改善
しています。
国内でも多くの場合が1年後には改善していることが多いようです。
また、前立腺肥大症(BPH)と性機能障害には優位な相関
あるといわれており、BPHのある人がフィナステリドなどを
服用すると性欲低下が生じることがありますが、
BPHのない人では生じることは少ないという報告もあります。*1

*1.Amory JK et al:The effect of 5α-reductase inhibition with
dutasteride and finasteride on bone mineral density,serum lipoproteins,hemoglobin,prostate specific antigen and
sexual function in healthy young men.J Urol 179:2333-2338,2008

 

ED(勃起障害)について
陰茎海綿体洞へ血流が送られないとEDが生じます。
高脂血症、動脈硬化、肥満などの血管性ED
高血圧の薬など薬剤誘発性ED
糖尿病などに合併する神経性ED
そしてテストステロン低下によるEDです。
AGA治療薬フィナステリドやデュタステリドにおいても
稀にEDの報告があります。
テストステロンは低下させない薬ですので
それ以外の要因が考えられます。
その多くはPDE5阻害薬の併用で改善します。
またEDにおいても前立腺肥大症との相関
あることが報告されています。
EDとBPHの両者には共通する機序があり、
BPHがある人はBPHの治療やAGAの治療により
ED,射精障害、性欲低下などの性機能障害が
生じる可能性があると言われています。*2

*2.吉澤 剛他:前立腺肥大症と性機能障害.
Prostate Journal 3(1),2016,89~96

 

射精障害について
射精障害には、射出障害、逆行性射精、
早漏、射精までの時間の延長があります。
AGA治療薬ではない前立腺肥大症のお薬α1アドレナリン
受容体遮断薬で、起こることがあります。
逆行性射精は糖尿病に合併する糖尿病神経障害によるもの
が多いです。
射精までの時間はテストステロンの影響を受けると
言われていますが、
フィナステリドやザガーロでも延長することがあるようです。
(これは副作用?副効果?)

 

そのほか
精液量の減少
精液は70~80%は精嚢由来
20~30%が前立腺由来といわれています。
フィナステリドやデュタステリドでも減少しますが
正常範囲内の減少量とのことではあります。

 

以上のように
性機能低下の多くは加齢によるテストステロン低下によるものです。
したがって、AGAの治療を開始してから症状が感じられた
場合にはテストステロンの測定を行うとよろしいです。

また男性は非常にデリケートです。
性機能障害が稀でも起きることがある薬だと効くと
なんと多く性機能障害が生じたというデータがあります。
「ノセボ効果」といいます。
例えば
薬でなくラムネ菓子を薬と言って飲ませ
「この薬は吐き気が出ることがあります」と説明して
飲ませると実際に吐き気を生じる人がいます。
このように思い込みによって
ないはずの副作用が出てしまうことをノセボ効果といいます。
男性の性機能関連の副作用はこのノセボ効果が影響しやすい
傾向があります。
性機能低下の関与についての副作用の説明をした場合と
しなかった場合とで、
説明をした場合にはしなかった場合に比べて28.3%も
多く性機能低下の症状の訴えがあったという報告もあります。
*3.Nicola Mondaini et al:Finasteride 5mg
and Sexual Side Effect:How Many of these are
Related to a Nocebo Phenomenon?,
J Sex Med 2007;4:1708-1712

 

もう一つ
確認が必要なのは併用薬です。
お薬によって性機能低下が生じるものがあります
高血圧の薬(AGAの治療に使用されることもある
ミノキシジルも降圧薬の一種です)。
利尿・降圧剤のスピロノラクトンでもなることがあります。
胃酸を抑制するシメチジンでも起こることがあります。
したがって、フィナステリドやデュタステリドのせいだと
思いこんでしまうことがないように、他の併用薬剤の有無の
確認が必要です。

 

私は、ノセボ効果にせよ、何か不調がある場合には
軽度であれば6か月以上経過をすると消失することが多いので
継続してみてください。でも
深刻であれば中止しましょうとお話しています。
女医ではありますが、このような心配ごとを患者様と気さくに
話し合えるような関係性を大切にしています。

 

 

 

 

 

 

投稿日:2017年9月5日  カテゴリー:★ 院長ブログ・医療情報 ★