腸内細菌と肥満との関連が最近話題ですね。
当院でもダイエットの目的でプロバイオティクスを
処方しています♪
成人の腸内細菌は大きくわけて主に2種の菌群から成り立っています。
グラム陽性菌の「フィルミクテス門」と
グラム陰性菌の「バクテロイデス門」です。
そしてそれらの菌は、私たちの体への作用の仕方から
善玉菌(有用菌)、悪玉菌(有害菌)、
日和見菌(時と場合によって有用にも有害にも働く菌)
にわけていますが、正確に良い菌悪い菌とは
区別することが難しく、全体の菌の割合のバランスが大切
といわれています。
そして腸内細菌が分泌するさまざまな成分は、
腸から吸収されて全身に影響します。
いわゆる善玉菌を含む「バクテロイデス門」の細菌が排出
する短鎖脂肪酸は、脂肪細胞に働きかけると脂肪の
取り込みが止まり、肥満を防いでくれます。
「フィルミクテス門」は、クロストリジウムなどの悪玉菌
やヨーグルトなど発酵食品に含まれている菌などです。
フィルミクテス門の細菌は食事から取り込むエネルギー量
が多く、肥満の原因になるといわれています。
肥満の人ではフィルミクテス門の細菌が多く、
バクテロイデス門の細菌が少ないことが明らかにされています。
*Turnbaugh, P.J et al. Nature.2006,444:1027-1031
複数の標準体型の人と肥満の人に
標準カロリーの食事を3日間食べさせた後、
高カロリーの食事を3日間食べさせ、
それぞれの期間の排泄物に含まれたエネルギー量と腸内細菌を検査しています。
肥満の人は標準カロリー食でも高カロリー食でも
エネルギー量に変化はありませんでしたが、
標準体型の人が高カロリー食を摂取するとエネルギー量は
減少するという結果が出ました。
また、高カロリー食を摂取すると、
フィルミクテス門の細菌が増加し、バクテロイデス門の
細菌が減少したということもわかっています
*Am J Clin Nutr. 2011 Jul;94(1):58-65
このように腸内フローラによる肥満の影響、
食事によっても悪化する、そして太ることで腸内フローラも悪化する
と考えられています。
そのような肥満と腸内細菌との関係についての
報告が多くなる中で、幼少期から腸内細菌を大切にして
おかないと生涯にわたり肥満のリスクが高くなるという報告がありました。
「小児期の抗生物質の使用と成人期のBMIとの関係」
B S Schwartz et al.Antibiotic use and childhood
body mass index trajectory:International journal of obesity 2015.Oct 21
米国の3歳から18歳の若者16万3820人を解析した結果、
小児期に7回以上の抗生剤投与をされた群の
15歳時の体重は、7回未満の群に比べて1.4kg多かったとのことです。
小児期の抗生剤投与で、BMIが生涯にわたり影響を受ける
可能性があり、成人になるとさらに悪化する可能性が高い
と述べられています。
以前に米国のプロバイオティクス専門家である
ステファン・F・オルムステッド氏の講演会の際に
伺ったところでは、一度抗生剤投与を受けると確実に
腸内フローラは乱れ、プロバイオティクス投与しても
回復するのには2か月かかるとおっしゃっていました。
したがって抗生剤を投与したら、必ず腸内細菌を整える
ケアを最低でも2か月するべきだといっています。
日本は抗生剤大国です。
保険診療が充実しているため、高価な抗生剤使用にも
遠慮することなく、あまり意味のない抗生剤投与や
無駄に長く投与されがちです。そして投与時投与後の
dysbiosisに対するケアはなされていません。
日本では、抗生剤を投与する医師は、
腸内細菌叢を乱してしまうことについての重大な問題に、
まったく配慮していない現状といえます。
腸内細菌の異常による肥満のみならず、
さまざまな影響について、
抗生剤を使用する医師自身に啓蒙する必要があると思います。