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カテゴリ:アトピー性皮膚炎

 

アトピー性皮膚炎の原因、治療の変遷(その3)~皮膚バリア機能の要 フィラグリン~

< 皮膚バリア機能の要は 「フィラグリン」 >

* フィラグリンタンパクの代謝産物が皮膚の天然保湿因子(natural moisturizing factor:NMF)に需要な役割

アトピー性皮膚炎の病態の主体は
「バリア機能異常」です。

このバリア機能異常に重要な関連性が示されているのが
天然保湿因子(NMF)の低下です。
本来私たちの肌に備わっている保湿機能に必須の因子です。

このNMFの主成分は「フィラグリン」というタンパクから
分解産生されるアミノ酸から成り立っています。

 

* フィラグリンは保湿因子としてだけではなく、バリア機能としても重要な役割  

皮膚表面の表皮細胞同士を凝集させる線維間凝集物質
としても働き、これらが欠乏している状態では
角層細胞ははがれやすく、バリア機能は低下します。
このバリア機能が低下すると
皮膚の外側と内側との浸透性が上昇し、経皮水分喪失量(transepidermal water loss:TEWL)は上昇しすなわち皮膚は乾燥してしまいます。

 

* アトピー性皮膚炎ではこの「フィラグリンが減少」している場合がよく見られます

フィラグリンの減少の原因には
・ フィラグリンの遺伝子異常、発現低下
・ フィラグリンを分解してNMFにする酵素(ブレオマイシン水解酵素:BH)の活性低下(発現低下)

フィラグリンの発現低下はアトピー性皮膚炎に限らず乾癬や
皮膚リンパ腫などほかの疾患においてもみられることがあります。
最近ではフィラグリン遺伝子異常・発現低下のみならず
BHというフィラグリンを分解するための酵素の発現低下している場合もあることが分かりました。
このBHの低下は加齢した皮膚(60歳以降で有意に低下)や乾燥肌程度でも確認されています。

そして季節変動やアトピー性皮膚炎の症状のコントロール状態
によってもBH活性は変化します
(すなわちアトピー性皮膚炎のコントロール状態を良好にすることでBH活性は改善します→アトピー性皮膚炎の症状を整えると本来の保湿機能が戻り、バリア機能が改善していくのです
*Kim.B.E et al.:J.Invest.Dermatol.,131:1272-1279.2011.
*菅谷 誠:医学のあゆみ,256:35-40.2016
*日比野利彦:J.Soc.cosmet.Chem.Jpn..,47:216-220.2013
*森田久美子ら:2015年第64回日本アレルギー学会学術集会にて発表

 

* したがってスキンケアをしてアトピー性皮膚炎の症状を抑え、整えることは
BH活性を高め、NMFの産生を増加させ、バリア機能改善につながります。

正しい保湿ケア・保湿剤の選び方については
アトピー性皮膚炎の原因、治療の変遷(その4)へ

投稿日:2017年9月12日  カテゴリー:★ 院長ブログ・医療情報 ★, アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎の原因、治療の変遷(その2)

アトピー性皮膚炎の診断。
日本皮膚科学会ガイドラインのアトピー性皮膚炎の診断基準は
このようになっています。

ですが、私が医者になった20年以上前とは、アトピー性皮膚炎と呼ばれる方たちの様子は、だいぶ変わってきています。

アトピー性皮膚炎のほとんどは、親や兄弟にもアトピー性皮膚炎の方がいらして、遺伝が明らかな場合がほとんどでしたが、
最近ではアトピー性皮膚炎と以前に診断されている方の半数は
遺伝的素因が認められません。

古典的なアトピー性皮膚炎は
遺伝的に皮膚のバリア機能、保湿機能が低下していて
幼少期より皮膚が弱く、
そして壊れた皮膚から外来物質が侵入することにより
ハウスダスト、ダニそして口の周りの皮膚があれていると
そこに付着した食物により感作され食物アレルギーも伴うことがあります。

アトピー性皮膚炎の病態は
「皮膚バリア機能の異常」です。

そしてそれに伴う「アレルギー炎症」です。

そのバリア機能異常の病態については
近年解明されつつあります。

安易に血液検査をして、IgEが高く、
アレルギーが陽性になるものがいくつかあり
湿疹が見られたらアトピー性皮膚です!
なんていういい加減な診断 今だによく見ます・・・。

そして湿疹に薬を塗ったり、
抗アレルギー薬を飲んで症状が治まったら
「治った」?
それは治っているのではなく
薬で症状を抑えているだけです。

当院ではエビデンスのある最新の医学情報をもとに
根底からアトピー性皮膚炎の病態を改善することに努めます。

ずっと薬を塗り続け、飲み続けていることに
不安を感じたら、ご相談ください♡

投稿日:2017年9月10日  カテゴリー:★ 院長ブログ・医療情報 ★, アトピー性皮膚炎

小児の遅延型フードアレルギー検査も始めます~アトピー性皮膚炎の原因、治療の変遷(その1)~

成人においては慢性疲労、肥満、アレルギー体質
等の原因の一つになりうる腸内環境の精査として
遅延型フードアレルギー検査を当院では行っております。
当院では日本国内では比較的早い段階である
5年前よりこの検査を導入し、
様々な疾患、症状におけるデーターの集積を
行ってまいりました。
その中でアトピー性皮膚炎患者における腸内環境の異常、
リッキーガット症候群の保有率は高く、
腸内環境に問題がある場合が多いことが
わかってまいりました。
これまでは成人のみで検査を行ってまいりましたが、
小児における状態の把握のため、
3歳以上の小児においても遅延型フードアレルギー検査を
開始いたします。

検査には人手が必要なため予約制とさせていただきます。

 

腸内細菌は、母親の産道及びその周辺から
新生児の消化管に定着します。
よって腸内細菌叢の形成には
分娩様式にて大きく左右されます。
母親から腸内細菌を受け継ぐため
当院では、アレルギー体質の母親が妊娠した際には
出産前にプロバイオティクス、バイオラクトの摂取を勧めています。

このように形成された腸内細菌叢は、
その後の食事、薬剤、後天的に入ってきた微生物、
ストレスなどで変化し、1~3歳ころには成人型の
腸内細菌叢へ移行します。
よって、それまでの時期の小児への抗生剤の投与は
腸内細菌叢に大きく影響を生じますので
医原性のdysbiosisとならないように

私は慎重に行っております。

腸内細菌のうち、有用菌(善玉菌)が
腸のバリア機能を整えており、
腸内細菌叢の乱れ、dysbiosisは腸での炎症を引き起こし、
その免疫異常は全身へ波及し、
アレルギー症状、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、
喘息など原因、悪化させます。

アトピー患者と健常者の腸内細菌叢とを比較すると
乳酸菌が有意に低下しているなど、
腸内細菌叢に異常を認めている
という報告は多数あります。
*1.Björkstén B et al.:The intestinal microflora
in allergic Estonian and Swedish 2-year-old children.
Clin Exp Allergy 29:342~346.1999
*2.Björkstén B et al.:Allergy development and
the intestinal microflora durring the first year of life.
J Allergy Clin Immunol 108:516~520.2001
*3.Kalliomäki M st al.:Distinct patterns of neonatal
gut microflora in infants in whom atopy was and was
not developng.J Allergy Clin Immunol 107:129~134.2001
*4.Watanabe S et al.:Difference in fecal microflora
between patients with atopic dermatitis and healthy
control subjects.J Allergy Clin Immunol 111:587~591.2003
*5.Penders J et al.:Gut microbiota composition and
development of atopic manifestations in infancy:
the KOALA Birth Cohort Study.Gut56:661~667.2007
*6.Suzuki S et al.:Differences in the composition of
intestinal Bifidobacterium species and the development
of allergic diseases in infants in rural Japan.Clin Exp Allergy 37:506~511.2007
書き切れませんのでこのくらいにします

 

この腸管でのバリア機能異常がありますと
遅延型フードアレルギーを引き起こしやすくなります。

当院では腸内フローラを調べる検査もしていますが、
詳細を見る検査は高額です。
本来は自分に保有している菌を
プロバイオティクスとして多く摂取することが
理想的であり、この検査を広く行いたいところ
ではありますが現実的にまだ難しいです。

遅延型フードアレルギー検査は、
腸で刺激になっている食べ物を
調べる目的のみではなく、
ある程度の腸環境、リッキーガット症候群の有無を
把握できます。

 

アトピー性皮膚炎の治療は、
生じている湿疹を速やかに治し、皮膚バリア機能を
改善することがとても重要ですが、
それは症状を抑えているだけにすぎません。
それ以外にも悪化因子を改善をしなければ
良い状態は保てません。
検査は自費となりますが、ご希望のある方は医師にご相談ください。

 

皮膚アレルギー疾患は腸内環境の影響>>>

 

遅延型フードアレルギー検査
¥28,000 (成人・小児ともに)
この検査に関係する診察料として別途初回診察料¥3,000
再診料¥2,000がかかります。(税別)

投稿日:2017年9月7日  カテゴリー:★ 院長ブログ・医療情報 ★, アトピー性皮膚炎, 小児皮膚科

イニクススキンセミナーの講演内容の一部をご紹介します

今回のセミナーでは、
お肌に多少なりともお悩みがあり、
「イニクス」のスキンケア用品にたどり着いた方にお集まりいただき、
お話させていただきました。

とても熱心にメモを取られている方も多く、真剣に聞いてくださるまなざしに、本当に悩んでいてお困りであることが感じとれました。

そんな方々のお悩みとは・・・

おとな女性に多い肌トラブルは
当院では
乾燥
ニキビ
化粧品かぶれです。

敏感肌であると感じている女性は、
最近では50%以上といわれているそうです。

その理由としてやはり乾燥や化粧品に刺激を感じやすい、ニキビと
当院と同じ結果です。

 

そのまずは
「乾燥」「化粧品かぶれ」について

 

乾燥してしまう原因は・・・

私たちの肌は本来、
化粧水を塗ったり、乳液を塗ったりしなくても「潤す」機能を持っています。
ですが、メイクをして、クレンジングして・・・・それらの本来の機能を失ってしまうようなことが日常的に繰り返されています。
そのダメージに対してのケアを怠ったり、過剰にしすぎることで、この素晴らしい機能を損ねてしまい乾燥してしまうのです。

 

 

この肌本来の保湿機能に大きく影響するのは
以下の因子です。

まずはこのなかの「天然保湿因子NMF」について

 

 

「フィラグリン」タンパクが分解されて天然保湿因子NMFになります。
体質的にこのフィラグリンに異常があるのがアトピー性皮膚炎の一部の方です。
そして最近ではこのフィラグリンの遺伝子異常
だけではなく、フィラグリンからNMFに代謝されるときに必要な酵素(ブレオマイシン水解酵素BH)が低下していることで乾燥してしまっている場合があることが分かっています。

 

そして一見汚れ?と思ってしまう
「皮脂」「汗」
これも大切な成分です。

 

水分の蒸発を防ぐ大切な「皮脂膜」を形成しています。
また脂肪酸が含まれていて肌を弱酸性に保ち、雑菌の繁殖を抑えています。
ですから、この皮脂膜を取りすぎてしまいますと
乾燥し、化膿しやすい肌になってしまいます。

そして角質細胞間脂質

煉瓦のように角質細胞が積み重なって壁を作り
外界から身を守っています。
その煉瓦と煉瓦をつなぎ合わせるセメントのような働きをしているのが「角質細胞間脂質」です。
この煉瓦の壁が壊れてしまうと
様々な侵入物が肌の中に入ってしまい刺激を受けます。
また肌の中の水分も蒸発しやすくなり
乾燥してしまいます。

この角質細胞間脂質の主成分はセラミドです。
やはり過剰な洗顔などで失いやすいです。

最近はこのセラミド配合の化粧品もありますね。

 

そしてバリア機能のこわれた結果の乾燥は
化粧品に刺激を受けやすくなり、
様々な物質に敏感になり
皮膚炎をおこしてしまうこともあります。

乾燥だけではなく
赤み、かゆみ、皮むけなどがある場合には自己流でスキンケアを行わず、皮膚科で治療を受けましょう。

 

次回は大人ニキビ肌のスキンケアについてご説明します♪

 

 

 

 

 

 

 

投稿日:2017年5月30日  カテゴリー:★ 院長ブログ・医療情報 ★, 美容・アンチエイジング, アトピー性皮膚炎

大阪で「イニクスのスキンケアセミナー」の講演をしてまいりました

5月28日(日曜日)
大阪のグランフロント大阪で
ヒルドイドでおなじみのマルホ株式会社
製造販売しているスキンケア用品「イニクス」
「スキンケアセミナー」で講演をしてまいりました。

「イニクス」についてはこちら>>>


イニクスカラーでコーディネートしていきましたよ♪

 

 


 

 

 

 

 

 

 

前回大人ニキビの原因について
一部講演の内容をご覧いただきました>>>

内容の続きをまたこのブログでご案内いたします。

またこの講演の様子は夏ごろに
Webで公開される予定となっております。

投稿日:2017年5月29日  カテゴリー:★ 院長ブログ・医療情報 ★, 美容・アンチエイジング, アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎のかゆみ治療に朗報♡

アトピー性皮膚炎のかゆみの原因として
重要な作用をしているIL-31を抑制するお薬の
情報が入ってまいりました。
もう一度復習してみましょう。

 

以前よりアトピー性皮膚炎のかゆみは
非常に多彩な要因があり、既存の内服薬では
充分な効果を出しにくいことについて書いてまいりました。

★「アトピー性皮膚炎においてかゆみ止めの飲み薬が奏功しにくい理由」
その1>>>
その2>>>
その3>>>
その4>>>

そのなかで、現在多くのかゆみ止めの飲み薬は
ヒスタミンというかゆみを引き起こす成分のみを
抑えるものが多く、現在かゆみの原因として
わかっている他のケミカルメディーエーターを
抑えられるものは少ないとお話いたしました。>>>
近年そのアトピー性皮膚炎のかゆみに関係している
ケミカルメディエーターの一つとして
「インターロイキン31(IL-31)」
という物質が注目されています。
*1 Dillon SR et al:Interleukin 31,a cytokine produced
by activated T cells,induces dermatitis in mice.
Nat Immunol.5:752-760,2004
*2 Raap U et al:Correlation of IL-31 serum levels with
severity of atopic demtitis . J Allergy Clin Immunol,122:421-423.2008

そして免疫抑制剤がこのIL-31を抑制できることが
わかっていますが、副作用の問題から汎用はできないのが現状でした。
*3 Otsuka A et al:Effects of cyclosporine on pruritus and
serum IL-31 levels in patients with atopic dermatitis.
Eur J Dermatol.21:816-817,2011

先日、九州大学生体防御医科学研究所の福井宣規教授らの
研究グループは、近年アトピー性皮膚炎におけるかゆみの
惹起物質である「IL-31」の産生に、EPAS1という
タンパクが重要な役割をしていることについて発表しました。
このEPAS1を抑えることでIL-31の産生を抑制し、
アトピー性皮膚炎のかゆみを抑えることができるため
今後新たなかゆみの治療薬の開発が期待されていた
ところでしたが

このEPAS1を抑えるお薬とはまた別の
IL-31を抑えるお薬の第Ⅱ相試験において
有効性と安全性が確認されたとの朗報が
入ってまいりました。
*N Eng J Med 2017;376:826-835

かゆみに関係しているケミカルメディエーターの
需要な一つであるIL-31が結合して作用する受容体に
変わりにくっついて、IL-31の作用を抑制するものです。
nemolizumab
抗インターロイキン(IL)-31受容体ヒト化モノクローナル抗体」と呼びます。

日本、米国、欧州において
成人の中等度から重症で
塗り薬だけでは十分にコントロールできない
アトピー性皮膚炎の患者さん264例を対象として試験が行われました。

4週間に1回皮下注射し、12週間経過をみています。
かゆみの改善効果は早く、投与後1週間から著明に
かゆみが減少しています。
そしてその試験後に、長期安全性・有効性をみる
試験においては、1年以上nemolizumabを継続投与
した結果、かゆみの改善の維持と、皮膚症状の持続的な
改善傾向が認められ、安全性上の重大な問題もありませんでした

まだまだこのお薬が使用できるようになるには
時間がかかりますが、
改善しにくいアトピー性皮膚炎のかゆみ治療が
前進しています♡
早く楽になりますように♡

 

投稿日:2017年4月11日  カテゴリー:★ 院長ブログ・医療情報 ★, アトピー性皮膚炎

「スギ花粉の皮膚炎」の新知見 -アレルギー反応による皮膚炎だけではなく、バリア機能も低下させますー

前回の勉強会の続きになります。

ナビジョンを製造販売する資生堂は、
スギ花粉症の主抗原(主な原因物質)である
「Cry j1クリジェイワン」が、目や鼻のアレルギー症状を
引き起こすだけでなく、皮膚のバリア機能を低下させる
ことを発見しました。

花粉が皮膚に付着した際に
皮膚でアレルギー反応を起こし、皮膚に炎症を
与えることは以前より知られていますが
皮膚のバリア機能そのものも低下させることも
わかりました。
*Kumamoto J et al:Archives of Dermatological Research 308:49-54
*Denda M et al:journal of Investigative Dermatology 109:84-90


スギ花粉症の主要抗原Cry J1
が皮膚に付着し、
皮膚内に侵入すると
PAR-2(プロテアーゼ活性化受容体2)が活性化され
炎症やかゆみが起こります。
PAR-2はアトピー性皮膚炎のかゆみのシステムにも
かかわっているひとつで、
皮膚表面のケラチノサイトでIL-6やIL-8などの
炎症を引き起こすサイトカインを放出させます。
*柳瀬雄輝他:PAR-2,アレルギー63(1)206-207.2014

そればかりでなくPAR-2が活性化されますと、
皮膚表面の細胞と細胞の間を満たし、
外来物質の侵入から守っている細胞間脂質の分泌が
抑制され、肌のバリア機能が低下することが
資生堂の研究でわかり、報告されました。

花粉症の時期には、
花粉の暴露からの回避のみでなく
十分な保湿ケアによるバリア機能の維持に
心がけることが大切ですね。

投稿日:2017年3月14日  カテゴリー:★ 院長ブログ・医療情報 ★, 健康情報・アンチエイジング, アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎のかゆみ物質の産生に重要なたんぱく質を発見ー新しいかゆみ治療薬の開発に期待ー


以前にアトピー性皮膚炎のかゆみは
非常に多彩な要因があり、既存の内服薬では
充分な効果を出しにくいことについて書きました。

★「アトピー性皮膚炎においてかゆみ止めの飲み薬が奏功しにくい理由」
その1>>>
その2>>>
その3>>>
その4>>>

 

そのなかで、現在多くのかゆみ止めの飲み薬は
ヒスタミンというかゆみを引き起こす成分のみを
抑えるものが多く、現在かゆみの原因として
わかっている他のケミカルメディーエーターを
抑えられるものは少ないとお話いたしました。>>>
近年そのアトピー性皮膚炎のかゆみに関係している
ケミカルメディエーターの一つとして
「インターロイキン31(IL-31)」
という物質が注目されています。
*1 Dillon SR et al:Interleukin 31,a cytokine produced
by activated T cells,induces dermatitis in mice.
Nat Immunol.5:752-760,2004
*2 Raap U et al:Correlation of IL-31 serum levels with
severity of atopic demtitis . J Allergy Clin Immunol,122:421-423.2008

 

そして免疫抑制剤がこのIL-31を抑制できることが
わかっていますが、副作用の問題から汎用はできないのが現状です。
*3 Otsuka A et al:Effects of cyclosporine on pruritus and
serum IL-31 levels in patients with atopic dermatitis.
Eur J Dermatol.21:816-817,2011

 

先日、九州大学生体防御医科学研究所の福井宣規教授らの
研究グループは、近年アトピー性皮膚炎におけるかゆみの
惹起物質である「IL-31」の産生に、EPAS1という
タンパクが重要な役割をしていることについて発表しました。
このEPAS1を抑えることでIL-31の産生を抑制し、
アトピー性皮膚炎のかゆみを抑えることができるため
今後新たなかゆみの治療薬の開発が期待されます。
ただし、前述したように、アトピー性皮膚炎のかゆみの
要因は多彩ですIL-31を抑えることは、かゆみのごくごく
一部の原因ですので、まだまだ開発の余地は大きいです。

ただ現実的にもう少し早くに期待できるものとして
数ヶ月後には乾癬の治療薬として
炎症性サイトカインを抑制する「PDE4阻害剤」の内服薬が発売になります。
免疫抑制剤よりも副作用がかなり少ないこと。そして
乾癬の症状およびかゆみを抑えることで期待されて
いますが、乾癬のみならず、アトピー性皮膚炎等のかゆみ
も抑えられる可能性がありますので今後期待できそうです。

アトピー性皮膚炎の方が、今よりもっと
かゆみに悩まされず、快適に過ごすことが出来るお薬が
早く開発されるとよいですね。

 

投稿日:2017年1月16日  カテゴリー:★ 院長ブログ・医療情報 ★, アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎など目の周りの湿疹の治療にステロイドの塗布は「緑内障」に注意!

以前にアトピー性皮膚炎の方は網膜剥離に注意が必要で
あることについて書きました>>>

きちんと目の周りの湿疹を治して
強くこすらないようにすることが重要です。

目の周りの湿疹は網膜剥離以外にも、
白内障、眼瞼下垂(まぶたのたるみの進行)
そして緑内障にも気を付けなければなりません。
アトピー性皮膚炎にかぎらず、
花粉症やアレルギー性の眼瞼炎(まぶたの湿疹)も同様です。

目の周りの湿疹の治療に、ステロイドの塗布を必要と
する場合には、眼圧のチェックなど緑内障に対しての
定期的な眼科検診が必要であるとする報告がありますので
ご紹介いたします。
★ ステロイド外用薬を使わないほうがいいという
説明ではございませんので、最後までご一読ください。

☆ 緑内障とは
少しずつ視野が狭くなる病気で、眼圧が高くなることで
生じます。

 

「ステロイド緑内障を併発した重症アトピー性皮膚炎の1例」
木村徹子 ほか 川崎医科大学皮膚科学教室
西日本皮膚科学会誌 78巻3号・2016

この報告の症例では、
コントロール不良な重症のアトピー性皮膚炎の患者さん
において、ステロイドの使用が原因による
ステロイド緑内障をきたしたというものです。

幼少時よりアトピー性皮膚炎がある方で、
これまでに悪化時にはステロイドの服用を20回ほど
受けていた事があります(プレドニゾロン換算で20mg/day程度を5~7日間)。
顔の湿疹に対してはstrongクラスやmediumクラスのもの
を直近の6か月で合計60g処方されていました。
→→→顔に使用するとしてはかなり強めのステロイドを大量に使用しています。

霧視の症状を自覚し、眼科で眼圧の上昇があり
ステロイド緑内障と診断されました。
その後(ステロイドの外用治療を減らすため)
ステロイドの服用に変更し、
さらに免疫抑制剤の服用へ変更し、
アトピー性皮膚炎のコントロールも良好になっています。

 

考察では、
ステロイドの外用治療と緑内障との関係について述べられています。

ステロイドの点眼におきましては、
その力価(強さ)、濃度、点眼回数に
緑内障の発症率が依存するとされていますが、
ステロイド外用剤(軟膏)では、強さと使用量と
緑内障の発症との関係は不明とされているとのことです*1。

一般的にはステロイドが目の周りで塗布・吸収されたり、
ステロイドのついた手で目をこすってしまうことで
結膜内に入り、眼圧が上昇するといわれてきました。

ただ、オランダの調査では、strong、very strongクラスの
ステロイドの塗薬を目の周りに
平均3.9日/週、6.4か月/年、4.8年間にわたり使用した37名
に、緑内障は発症しておらず、
眼圧の上昇とステロイド外用薬との関連性はないとの
報告もあります*2。
日本の報告では、1981年から1990年の9年間に
ステロイドをまぶたに塗布した場合の緑内障の発症は
5.6%と報告されています*3。

まぶた以外の顔へのステロイドの塗布により
経皮吸収されたことによる眼圧への影響は無視できる*3
とか、mediumクラス5g/月程度の使用では眼圧上昇の
原因にはなりにくい*4という報告が多いですが、
筆者らは、ステロイド外用剤により眼圧が上昇したと
考えざるを得ない症例も23例あるとも述べていますので
やはり気を付けている必要はあるといえます。

 

この中で、ステロイドの投与の投与方法は問わず、
ステロイドの使用により眼圧が上がりやすい
「ステロイドレスポンダー」と呼ばれる人たちが
30~40%いるとのこと。
また若年者では眼圧が高くなる影響を受けやすいことは
確かなようです*5*6*8。

そしてまぶたに塗布した外用剤が涙液に移行しうること。
アトピー性皮膚炎の患者では結膜のバリア機能が優位に
低下しており、ステロイドの眼内への移行が高くなる危険
があるという報告もあります。
ただ常識的な使用においては緑内障の心配はないと述べられています*7。

 

まとめますと、
まぶたへのステロイドの使用は、
アトピー性皮膚炎のある人、
若年者においては眼圧に影響する可能性があるので
使用している場合には、定期的に緑内障のチェックが必要。
そうでない人でも眼圧が上がりやすい体質の場合もある
ので、ステロイド剤をまぶたによく使用する人も眼科での
定期健診を受けたほうがよろしいです。

 

 

*1 酒井 勉ほか :ステロイド白内障・緑内.
Modern Physcian ,2009;29:703-704

*2 Haeck IM ey al :Topical corticosteroids in atopic
dermatitis and the risk of glaucoma and cataracts,
J Am Acad Dermatol,2011;64:275-281.

*3 勝島晴美ほか:副腎皮質ステロイド剤の皮膚外用
におけるステロイド緑内障の発生頻度.日眼会誌,1995;99:235

*4 有川順子ほか:アトピー性皮膚炎患者の眼圧と顔面への
ステロイド外用療法との関連性についての検討.
日眼会誌,2002;112:1107-1110

*5 羅 錦營他:「小児科医が知っておきたい眼科疾患」
ステロイドの眼合併症,小児科診療,2004;67:1269-1669.

*6 Ohji M et al:Marked intraocular pressure response
to instillation of corticosteroids in children.Am J
Ophthalmol,1991;112:450-454.

*7 横井則彦ほか:皮膚科治療の最前線 顔の皮疹に対する
ステロイド外用薬をどう考えるか(その6)眼科的立場
から.皮膚臨床,1995;37:1045-1050.

*8 大路正人ほか:小児におけるステロイド・レスポンダー
の頻度.臨床眼科,1992;46:749-752.

投稿日:2016年12月21日  カテゴリー:★ 院長ブログ・医療情報 ★, アトピー性皮膚炎

○○テックなど保温肌着による皮膚トラブルが増えています!

11月29日の日経メディカルの記事より。

○○テックなどの商品で販売されている
保温肌着による皮膚トラブルの原因になっているケースを
よく見かけるようになりました。
そのことについての記事をご紹介します。

保温肌着は、皮膚表面から放出された湿気を繊維が
吸収し、水蒸気が水に変わるときに発生する凝縮熱
によって皮膚表面を温める下着のことです。
この吸湿性が肌の乾燥につながるようです。

保温肌着は、アクリレート系繊維やアクリル、
ポリエステル、レーヨン、ポリウレタンといった
化学繊維と綿、絹などの天然繊維を組み合わせて作られているそうです。
たとえばアクリレート系繊維は天然繊維の綿のみの3.5倍
吸湿性が高いとのことです

また、乾燥症状のみにとどまらず
逆に汗をかきやすい部位では、保温肌着の保温効果で
発汗や皮脂の分泌が亢進し、
マラセチア毛包炎(カビによるニキビに似たぶつぶつ)
引き起こすと言います。

松田ひふ科の松田哲男先生によりますと、
保温肌着の登場とともに、
夏に多いマラセチア毛包炎が冬季にも増えている。
気温の下がる12月から翌2月までの間のその患者数は
2005/2006では12人だったのが
2015/2016では41人に増えていた。
とのことです。
患者さんに聞き取り調査をしたところ
全員、寝ている間も保温肌着を着ており
保温肌着との関連が考えられたとのことです
寝具と肌着の相乗効果で皮膚温が上がりすぎて、
気づかないうちに、汗をかきやすくなる。
汗とともに皮脂の分泌も多くなり、
マラセチア菌の繁殖に好んだ環境が就寝中持続してしまいます。

 

これから寒くなりますが、
保温肌着をずっと着用していると
肌トラブルの原因となることもありますので、
できるだけ綿素材のものにして過ごしましょう。

投稿日:2016年12月15日  カテゴリー:★ 院長ブログ・医療情報 ★, ニキビ, アトピー性皮膚炎, その他