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幹細胞培養上清の点滴治療により劇的な疼痛の改善効果のみられた症例について ~エクソソーム(miRNA)治療への期待が高まります♪~

頚椎症性神経根症の痛みに悩まれていた方に、
幹細胞培養上清液の点滴投与を行ったところ、
劇的に改善された方がいらっしゃったのでご報告いたします。

62歳 女性 歯科医

2019年10月1日の朝より突然
左肩甲骨部と左腕に激痛が走り、ベッドか起き上がることができなかった。
とくに腕を動かさなくても、どのような体勢をとっても、とくに肩甲骨が痛く、
3時間毎にロキソニンを服用しても効果がなかった。
痛みで夜も眠ることができなかった。
発症して1週間した頃には腕が常に紫色になり(血行障害)、しびれを伴うようになった。
痛みは増すばかりのため、10月9日に整形外科を受診。
頚椎症性神経根症(神経が首の骨で圧迫されている症状)との診断で、ロキソニンを中止し、
ノイロトロピンとリリカを処方されたが、効果はあまりなく、腕を振って歩くこともできなくなっていった。
症状が改善しないため、15日に別の整形外科を受診したところ、
診断も処方された薬も全く同じものであった。

頚椎症性神経根症とは>>>

ペインクリニックでも相談したところ、リリカの増量と抗うつ薬の服用をすすめられたが、抵抗があり指示には従わず経過をみていた。

歯科医としての仕事に支障が生じ、引退を考えた。
毎週の様に行っていたゴルフもできなくなり、精神的にもかなりうつ状態になっていた。

以上はご本人から書いていただいたこれまでの経過です。

 

たまたま当院の美容治療の予約があり、受診された際にその相談をうけ、
幹細胞培養上清の点滴治療について紹介し、
抗炎症作用が期待でき、痛みの緩和になる可能性、
また痛んだ神経の修復に役立つ可能性、
血行改善効果について説明をし、
投与を行いました。

10月23日 ヒト幹細胞培養上清 10 ml 点滴投与、亜鉛サプリメント開始

点滴当日より、左腕が循環障害のため紫色になっていたのが消失し、
疼痛の軽減があったそうです。
連日痛みで睡眠障害を起こしていましたが、点滴当日は朝まで起きることなく熟睡できたそうです。
その後日に日に痛みが和らぎ、痛みとしびれで使用できなかった左手が使えるようになったとのことで、2回目の治療を希望されました。

10月30日 10 ml  ヒト幹細胞培養上清 10 ml の2回目の点滴投与

さらに疼痛は改善し、鎮痛剤を飲まなくて良くなり、
11月6日 受診時には手のわずかなしびれ感を残すのみとなっていました。
よって3回目の幹細胞培養上清の点滴を希望されましたが
かなり症状が改善しているため投与せず
この日は
25gの高濃度ビタミンCおよびビタミンB群の点滴を行いました。

その後は疼痛はなく、1日に数回 しびれを感じるくらいになっているそうです。

 

このドラマチックな経過を経験しまして、
専門外の領域ではありますが、関節症状、神経症状、循環障害に対しての
幹細胞培養上清の作用機序について調べてみました。

体全体の老化した細胞、臓器の修復を目的とし、
もちろんお肌の老化に対して改善を期待して行っているヒト幹細胞培養上清治療ですが、今回さらに勉強をして、この方の結果が偶然ではないことが理解できました。

難しい話になってしまいますが(いつものことですが(笑))
この内容を知りたい先生方も多いと伺っていますので、少々専門的な内容で説明します。

幹細胞培養上清液については以前にもご紹介していますが>>>
その中には細胞の増殖や分化を促進するサイトカイン、成長因子などによる作用の他、遺伝子制御のファインチューナーといわれるマイクロRNAが豊富に含まれ、その作用によりさまざまな効果を発揮します。
とくに近年マイクロRNA(miRNA)についての研究が飛躍的に進んでおり、
これに基づく診断、治療が幅広い分野で注目されています。
このmiRNAは「エクソソーム」という小細顆粒状物質の中に含有され、血液、髄液、母乳にいたるまで全身の体液に含まれていて全身を循環しています。
細胞はmiRNAを含んだエクソソームを分泌することで、遠く離れた組織にまで、エンドクライン的に情報を伝達しています。
今回のような「疼痛」や「関節炎」、「神経症状」とはどのように関与しているかについても多く研究されています。
神経障害性病変においてはmiRNAが増加しているものと減少しているものが認められます。
例えば炎症性疼痛下にある脊髄後根神経節では60種類以上のmiRNAの発現が低下が報告されています*1。
また神経障害性疼痛モデルマウスでは、脊髄後根神経節においてmiRNA-7aの発現低下が引き起り、疼痛伝達に関係するNaチャネルの発現を調整しているという報告(cf.鎮痛剤のキシロカイン、テグレトール、メキシチールなどはNaチャネル遮断薬)*2。
脊髄後角においてmiRNA-103の発現が低下し、やはり疼痛伝達に関係するL型カルシウムチャネルの発現が増加するという報告*3。
そしてまさに今回の患者様の頚椎症性神経根症の様に神経を圧迫した状態に似た
脊髄後神経節の坐骨神経を結紮した場合に、1週間後には非結紮群と比較して317種類のmiRNA発現が増加し、85種類のmiRNAの発現が低下していたという報告があります*4。
このように神経障害病変においてmiRNAの発現が変化し、この発現変動は疼痛に関与しているといえます。
今回の患者では関節内投与や脊髄腔内投与ではなく、静脈投与(点滴)で治療をしましたが、実際に、神経障害性疼痛モデルラットを用いた実験で、その際に発現が増加していたmiRNA-21を標的としたmiRNA-21 inhibitorを脊髄腔内へ持続注入することで、痛み閾値が回復するという報告があります*5。

この患者様も幹細胞培養上清中のエクソソーム内のmiRNAが作用し、
疼痛の痛み閾値を変化させた可能性が考えられます。

また痛み閾値の改善ばかりではなく、幹細胞培養上清には抗炎症効果があります。
エクソソームがマクロファージを炎症型のM2型スイッチすること*6。
活性化したTを制御性T細胞へ変化させること*7。
さらにはTNFα、iNOS、COX2、IL-1β、MCP-1などの炎症性サイトカイン・メディエーター産生を抑制し、他方IL-10等の炎症性サイトカインを増強も報告されています*8,*9,*10。

この患者さんも幹細胞培養上清中のサイトカインやエクソソーム、miRNAなどによる抗炎症効果による症状の改善が考えられます。

今後はこのヒト幹細胞培養上清治療とくにそれに含まれるエクソソーム、miRNAは、他分野において新たな診断、治療戦略となっていくようです。
皮膚科においては帯状疱疹後神経痛のような慢性疼痛の治療のひとつの選択肢となる可能性があります。既存の治療で改善の見られない場合には、ヒト幹細胞培養上清の点滴治療を試みていこうと考えています。

 

*1.Zhao J.Lee MC et al:Sall RNAs control sodium channel expression.nociceptor excitability and pain thresholds.J Neurosci 30:10860-10871.2010.
*2.Sakai A,Saitow F et al:miR-7a alleviates the maintenance of neuropathic pain through regulation of neuronal excitability.Brain 136:2738-2750.2013
*3.Favereeaux A,Thoumine O et al:Bidirectional integrative regulation of Cav1.2 calcium channel by microRNA microRNA-103:role in pain.EMBO J:3830-3841,2011
*4.成田 年、浜田祐輔:慢性疼痛におけるmiRNAならびにエクソソームの役割;新規バイオマーカーとしての「分泌型miRNA」解析の有用性.アンチエイジング医学ー日本抗加齢医学会雑誌10:28-34,2014
*5.Sakai a,Suzuki H:Nerve injury induced upregulation of miR-21 in the primary sensory neurons contributes to neuropathic pain in rats.Biochem Biophys Res Commun 435:176-181,2013
*6.Lo Sicco C et al:Mesenchymal stem cell-deriverd extracellular vesicles as mediators of anti-inflammatory effects:endorsement of macrophage polarization.Stem Cells Transl Med 6:1018-1028,2017
*7.Monguió-Tortajada M et al:Nanosized UCMSC-derived extracellular vesicles but not conditioned medium exclusively inhibit the inflammatory response of stimulated T cells:implications for nanomedicine.Theranostics 7:270-284,2017.
*8.Yang J et al:Extracellular vesicles derived from bone marrow mesenchymal stem cells protect against experimental colitis via attenuating colon inflammation,oxidative stress and apoptosis.PLoS One 10:e0140551,2015
*9.Li x et al:Exosome Derived From Human Umbilical Cord Mesenchymal Stem Cell Mediates MiR-181c Attenuating Burn-induced Excessive Innflammation.EBioMedicine 8:72-82,2016
*10.Yu B et al:Exosomes derived from SCs ameliorate retinal laser injury partially by inhibition of MCP-1.Sci Rep 6:34562,2016
*11.岩崎剣吾、森田育男:間葉系幹細胞エクソソームの疾患治療への応用.最新医学73:1243-1253,2018

投稿日:2019年11月17日  カテゴリー:★ 院長ブログ・医療情報 ★, 健康情報・アンチエイジング, 美容・アンチエイジング