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第46回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会総会学術大会のご報告<その3>「酒さ」についての病態知見

「酒さ」
赤ら顔(紅斑、毛細血管拡張)、
ニキビ様のぶつぶつ(丘疹、膿疱)、鼻がこぶ状に
腫瘤形成する(鼻瘤)といった症状を呈する
根本的な原因のわかっていない
皮膚疾患です。

日光、気温(熱)、乾燥などの外界からの刺激や
アルコール、精神的な緊張でも悪化しやすいといわれています。

皮膚にだれでも常在するアクネ菌や毛包虫(デモデックス)
との関与があるとかないとかいまだ諸説ありますが、
何らかの外界からの刺激や微生物に対する自然免疫機構の
変化が確認され、それとの関与が指摘されています。

それについてのご発表がありました。

 

「酒さを巡る自然免疫の役者たち」 山崎研志先生(東北大)より
*山崎研志:皮膚疾患と自然免疫,医学のあゆみ vol.242 no.10 2012

皮膚の自然免疫機構の主要因子と考えられている
「抗菌ペプチド」という成分が皮膚表面に多種あります。
菌の感染や物理的刺激に伴い誘導され、
それらを排除する働きをしたり、
種々の反応(皮膚炎など)を起こして知らせる働き
(alarmin 警鐘をならすともいわれている)
があるといわれています。

「酒さ」においては、この自然免疫機構の過剰な反応が
あるといいます。
自然免疫機構の最初のステップは、
Toll様受容体(TLR)が外界刺激や病原体を認識すること
から始まりますが、
酒さにおいてはこのTLR2の発現が異常亢進
していることが示唆されています。
このTLR2は、
正常な皮膚ではほとんど検出されることのない
抗菌ペプチドの「カセリサイディン」(CAMP)を誘導し
異常発現させていることも認められています。
また、
たんぱく分解酵素(プロテアーゼ)のカリクレイン5
カセリサイディンの主な分解酵素であり、
これも同時に正常皮膚よりも酒さにおいては高い酵素活性を呈しています。
これらが互いにかかわって正常皮膚とは異なる
抗菌ペプチドパターンを呈し、
皮膚の炎症を誘導し、酒さの皮膚炎症の原因となっている
と考えられます。

酒さの中でも、もともとざ瘡があった場合や、
ざ瘡を伴っている場合においては、
アクネ菌はTLR2を刺激し、炎症反応を増強します*1。
ステロイドの使用においても、
TLR2の発現増加とアクネ菌などのTLR2刺激に対する
反応性の増加が病態として示唆されています*2。

このようなことから、
酒さでは、外界の変化を感知する宿主側の因子が
変化することによって(細菌叢の変化、薬剤性などにより)、
正常皮膚では影響を受けない程度の
刺激に対しても過敏に反応している状態が形成されている
考えられます。

*1 Kim.J. et al:J .Immunol.,169:1535-1541,2002
*2 Shibata.M. et al:J.Invest.Dermatol.,129:375-382.2009.

 

なんとなく病態がわかってきていますが
治療まだまだの難しい複雑な皮膚疾患です。

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