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瘢痕・ケロイド治療研究会に出席しました ~その2:瘢痕(はんこん)、肥厚性瘢痕とケロイドの違い~

問診の際に「私ケロイド体質なので心配です」と
おっしゃられて、昔の傷を見せていただくことが
たびたびあります。
でも正常な治癒過程において跡の残ったいうならば
正常な傷跡のことが多いです。

いわゆる普通の傷跡と肥厚性瘢痕、ケロイドとは
何が異なるのでしょうか。

どんな小さな怪我も、必ず傷跡は残っています。
肉眼的に傷が見えなければ傷が残らなかったというだけのことなのです。

皮膚に傷ができると、新しく線維が増えて傷を覆います。
元通りの皮膚に戻るわけではありません。
傷の部分の線維は元の皮膚の線維よりも配列が不規則
なので、周りの皮膚と色や質感が違って感じます。
これが「傷跡」です。

傷跡(瘢痕)が残った(どの傷跡ものこっていますが目立つ場合)
という場合にはいろいろな状態があります。

1、みみずばれになって赤く盛り上がっている
2、盛り上がっていないが赤い
3、みみずばれになって白く盛り上がっている
4、盛り上がっていないが白い
5、表面がつるつる光った感じ
6、色素沈着になっている
7、傷が段違いになっている
8、へこんでいる

など様々です。
このなかで1が「肥厚性瘢痕」または「ケロイド」
と呼ばれる状態です。
この肥厚性瘢痕やケロイドになるかどうかには、
なりやすい体質、人種、なりやすい場所、
傷がひっぱられている、
なりやすい年齢、傷が治る途中でバイ菌の感染を
伴ったかどうか
などの要素があります。

もとの傷をこえて、どんどん盛り上がったり
周囲へ傷跡が広がる場合を以前はケロイドとして、
肥厚性瘢痕とは区別していましたが、
最近では厳密に区別することは難しく、程度の差という認識となっています。

どうしてこのように、過剰に傷跡が広がってしまうのか
については
まだ不明な点も多いですが、その機序についての発表がありました。
*「ケロイド病態におけるIL-10の炎症制御機構」
藤田宗純先生 北海道大学医学部形成外科

正常な傷の治癒過程においては、一時的に傷が赤く盛り上がっても
次第に赤みが薄れて傷の盛り上がりも目立たなくなってきます。
これが正常な治癒過程です。

傷が生じると、炎症性サイトカインと呼ばれる
「傷をなおしてね!」というサインが送られます。
そうすると、様々な細胞が誘導されて線維化されて
傷は治ります。
この際に、「もう治ったからお仕事終わり!」という
サインがいつまでも出されすに、働き続けている状態が
肥厚性瘢痕やケロイドの状態です。
この状態が正常よりもこのように進んでしまうと
傷は過剰に赤く盛り上がってしまいます。
そのようにして過剰に働いて治ったものを肥厚性瘢痕、
まだまだ働き続けて傷の修復作用が止まらない状態がケロイドです。

この「傷なおしてね!」というサインが「IL-6」
「もう治ったからお仕事終わり!」というサインが「IL-10」
という成分と言われています。
正常な傷のところでは「Il-6<IL-10」とIL-10が多くなっていますが、
ケロイドのところでは「IL-6>IL-10」の状態になっており
まだまだ過剰な線維化を誘導している状態になっているとのことです。
このIL-6とIL-10のバランスが、何らかの原因でバランスが崩れているのですね。

また肥厚性瘢痕と、まだまだ進行性のケロイドとを
見分けるのには、傷を組織検査に出してみることも
あります。
ケロイドや肥厚性瘢痕の病理にも詳しい先生からの
お話しもありました。
*「瘢痕:Scarと関連疾患の病理検査」
安斎 眞一先生 日本医科大学武蔵小杉病院 皮膚科

検査した部分によっても異なってしまいますし、
特徴的なkeloid collagenの有無だけではケロイドと
言えないことも多く、
実際にはその2つを明確に区別することは難しいそうで、
病理組織上においても、両者の所見は混同しているようです。

したがって肥厚性瘢痕もケロイドも併せて
傷の状態をグレードに分けて
治療方針を決めていきます。
Japan Scar Workshop Scale JSWスケール>>>

 

次回はその治療についての発表について
お話しいたします。

 

 

 

 

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