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アトピー性皮膚炎の方のかゆみは複雑です

アトピー性皮膚炎の方にかゆみ止めの
飲み薬(抗ヒスタミン剤)をお出ししても、
効いているような、効いていないような・・・
効いているとは思えない・・・
そういう方も多いですね。
そのなぜ効きにくいのか。研究が進んできています。
近い将来は、抗ヒスタミン剤でないかゆみ止めが
出てくるものと思います。

「かゆみ」といっても色々な経路でさまざまな因子により
生じます。
ごく簡単に図にまとめてみました。
現在ではもっとたくさんの因子が絡みあっていることが
わかってきています。

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「かゆみ」には、
「末梢性のかゆみ」「中枢性のかゆみ」があります。
末梢性のかゆみは、表皮と真皮の境界部に分布している
神経C線維が、さまざまな刺激で活性化されてかゆみになります。
その刺激は、こすれたり、さわったりといった機械的
刺激や、電気刺激、温度刺激のような物理的な刺激と、
湿疹・皮膚炎などで生じたケミカルメディエータ
による化学的刺激です。

アトピー性皮膚炎のかゆみは、
主にこのケミカルメディーエーターによる
「末梢性のかゆみ」であると考えられていました。
ヒスタミンという物質を介した反応です。
したがって、一般的によく処方されるかゆみ止めは、
抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤と呼ばれるものなのです。
しかし、最近では、アトピー性皮膚炎では、神経終末の
プロテアーゼ活性化受容体(protease activated receptor,
PAR)-2の発現が亢進して痒みを引き起こしているという
報告もでています*1*2。
ヒスタミンよりも、プロテアーゼが、
より広範囲なかゆみに関係することがわかり、
プロテアーゼやPAR2プロテアーゼ活性化受容体を
抑制する止痒剤の研究が進んでいます。
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これに対して「中枢性のかゆみ」は、
内因性のオピオイドペプチドが、神経に存在する
オピオイド受容体に作用することで、
かゆみが生じます。
最近では、アトピー性皮膚炎は、
このオピオイド受容体が関連しているため
抗ヒスタミン剤のみでは、かゆみを抑えきれないと
考えられています
近年このオピオイド系を調節する内服薬が
痒みを抑えるとの報告もでてきています*3,*4。

このようにアトピー性皮膚炎においては、
末梢性のかゆみと中枢性のかゆみが複合的に
存在しており、かゆみを止めることが非常に難しいのです。

さらには、アトピー性皮膚炎の方の皮膚では、
皮膚の痛みに対する反応性が鈍いため
(神経などに存在する多様な刺激で活性化される
Transient receptor potential,TRP)V1の反応性の低下
による)、掻破行動が抑制されないことが示唆されています*5。
すなわち痛みに対して鈍くなっているので、
強くかいても痛くないので、
痛いからかくのをやめようとか、
もう少し弱めに掻こうというきになれず、
強くかき続けてしまうということです。
そのかき壊した皮膚が炎症を起こし、また痒みの誘発に
つながるという悪循環が起こっている可能性があります
このTRPV1拮抗薬で掻破行動(かき壊す行動)を
抑制できることも報告されています*6。

このように、かゆみに関するさまざまな因子が
明らかとなりつつあり、より効果的な止痒剤が
開発されてきています。
はやく、もっと痒みを止めてさしあげたい・・・。
そう願う毎日です。

 

*1.Briot A et al:Kallikrein 5 induces atopi dermatitis-like
lesions through PAr-2-mediated thymic stroml
lymphopoietin expression in Netherton syndrome.
J Exp Med.2009;206:1135-47

*2.Steinhoff et al:J.Neurosci,23,6176-6180(2003)

*3.Herzog J et al:J.Drugs Dermatol,10,853-860(2011)

*4.Malekzad F et al;J Eur.acad.Dermatol.Venereol,
23,948-950(2009)

*5.「アトピー性皮膚炎における皮膚の知覚反応と
TRPV1との関連性に関する研究」
東京農工大学・早稲田大学 夏 彦

*6.Yun,J.w et al;J Invest.Dermatol.131,1576-1579(2011)

 

 

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