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皮膚にも細菌叢(フローラ)がある ~アトピー性皮膚炎との関連性~

腸内細菌叢(腸内フローラ)は、私たちの
健康維持に非常に重要であり、
腸のバリア機能の破綻により、アレルギー、
自己免疫疾患、精神疾患、慢性疲労など
様々な病気の原因となることについて
ご説明してまいりました。>>>

皮膚も腸と同じように、外界からの病原菌や異物からの
侵入を防ぐためのバリア機能があります。
何らかの原因で皮膚のバリア機能が壊れると
アトピー性皮膚炎の症状を呈します。
従来は、遺伝性の素因が主な原因となり、
脆弱な皮膚がさまざまな刺激を受けやすく、
また過剰に反応しやすく炎症が起きやすくて
皮膚炎になると考えられていました。

最近では、このような遺伝的背景のある古典的な
アトピー性皮膚炎の方よりも、
家系にはアトピー性皮膚炎の方がいない場合が大半を占めます。
必ずしも遺伝的なアトピー素因がなくても、
様々な原因で、アトピー性皮膚炎様の症状を呈している
場合がかなり含まれていると私は考えています。
とくに成人においては、背景が多彩と感じます。

他でアトピーと診断されていても、
あかすりタオルやブラシなど硬いもので洗っていて、
外的な物理的な刺激で、皮膚のバリア機能を低下
させているだけである人も多くみつけます。

また、社会人になったり、ひとり暮らしになったり
したきっかけに発症している場合も多く、
食生活の偏りが原因で、蛋白質、脂溶性ビタミン、
鉄、コレステロールなどの摂取の低下により、
日々の皮膚の再生に必要な栄養素が不足して
脆弱な皮膚となり、
アトピー性皮膚炎様症状を生じている場合も多くみられます。

そしてストレス性
ストレスそのものによる免疫機能の異常、
もしくはストレスから腸機能が低下し、消化吸収機能の
低下による必要栄養素の不足。

食生活習慣の悪化による腸内フローラの異常による
アレルギー症状によるもの。
食物アレルギーの関与する状態。

など非常に多彩です。
これらをまとめてすべてアトピー性皮膚炎と
呼んでよいものかを検討する必要があると考えています。

そして最近のさらにトレンドは、
皮膚のフローラ(細菌叢)による影響です。
慶應義塾大学医学部皮膚科学教室と
米国national Institutes of healthの研究グループが
今年4月に発表した
「アトピー性皮膚炎は皮膚の異常細菌巣が引き起こす」
では、アトピー性皮膚炎患者の皮膚では、
異常細菌巣の状態がある(dyabiosis)
すなわち皮膚の常在菌の細菌の種類が著しく減り、
その過半数が黄色ブドウ球菌を占めるという異常な状態に
ある場合が多いこと。
そしてその異常になった細菌巣を改善させると
アトピー性皮膚炎の症状が改善することをマウスで
証明し、皮膚の細菌巣(フローラ)を整えることが、
今後のアトピー性皮膚炎の新しい治療戦略になることが
期待できると報告されました。

そしてさらには、千葉大学からは、
その増えた黄色ブドウ球菌の出すδ-toxinという毒素が、
IgE(アレルギーの指標に使用している抗体の一つ)の
存在下では、過剰に反応(マスト細胞の過剰な
脱顆粒反応)しており、
このことが皮膚炎の発症に関与している可能性が報告されました*1。
よってバリア機能の低下したアトピー性皮膚炎の皮膚で
dysbiosisを引き起こし、
無秩序に黄色ブドウ球菌が増殖することで、
くわえてIgEが高い体質があると、過剰にδ-toxin
反応し、皮疹の原因になると推察しています。

とはいえ抗生剤の安易な服用は、
腸内細菌への悪影響があるため、
アトピー性皮膚炎の治療方法としては推奨しない
と慶応大学からは注意を促しています。

そして厄介なことに、
アトピー性皮膚炎では、
黄色ブドウ球菌はバイオフィルムを形成している

という報告もあり、容易には退治できないようです*2。

バイオフィルムとは種々の菌が集まり、
さまざまなバリア物質で菌を囲み、
免疫や抗生剤などが効かないように防御している状態。
近年はこのバイオフィルムのために、除菌できない
問題があります。現在バイオフィルムを破壊する
薬剤や対策がすすめられているところです。

 

千葉大学の松岡悠美先生は、
「今後は皮膚の本来の正常な細菌叢を傷つけずに
病原細菌のみを減らす治療の開発が可能であろう」
しめくくっています。

 

このようにまだまだ不明な点の多い
アトピー性皮膚炎です。
少しずつ分かってきている情報を整理して、
皆様と知識を共有して、
治療に励みたいと思っております。

 

*1.松岡悠美 千葉大学大学院医学研究院皮膚科助教
アトピー性皮膚炎における黄色ブドウ球菌の病原性:
皮膚アレルギーフロンティア vol.13.no1 2015 48-49

*2.Herbert B Allen et al:The presence and impact of
biofilm-producing staphylococci  in atopic dermatitis.:
JAMA dermatology.2014 150(3) 260-5

 

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